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きわめて一般的な日常

きわめて一般的な日常を綴っていたはずなのですが、いつのまにかアニメやゲームの話ばかりになっていました

ベン・トー 第12回 『国産うなぎ弁当 790kcal』


先輩、ちょっとかっこつけてもいいですか
静かに寝息を立てる槍水の枕元でつぶやくようにそう声をかけ、佐藤は未だ熱の下がらない彼女が半額弁当時間直前に設定した目覚まし時計の針をずらす。こんなふらふらの先輩を戦いに出すわけにはいかない。うなぎ弁当は俺が必ず獲ってくる!


その日のスーパー『オードリー』には佐藤が今まで見たことがないほど多くの狼が集結していた。土用の丑の日にできたてほかほかうなぎ弁当が半額になるともなれば、なるほどさもありなん、人一倍嗅覚の鋭い彼らが見逃すはずも無い。そんな知らない顔の中に、やつはいた。


ヘラクレスの棍棒>の二つ名を持つ狼が。



強すぎる存在。それはたしかにおもしろものではないだろう。
たとえば今年のF1で感じたセバスチャン・ベッテルの圧倒的な速さ。もちろん優秀な選手が勝利することは当然で、その結果を高く評価をすることはやぶさかでは無い。しかし、正直なところ、今年はつまらないレースが目立った。ほとんど最初の数周で勝敗が読めてしまい、あとは中段でひいきの選手がどれだけがんばってくれるか、それだけを注目していた気がする。


F1に限らず、モータースポーツは特定のチームが強くなりすぎると調整を入れようとするものだ。強豪チームが強豪である要因である技術を規制したり*1、勝ったチームのクルマに対し次のレースでは強制的にハンデを加えたり*2、お金のあるチームと無いチームでの格差をなるべく縮めたり*3、はたまた全チームが同じクルマを使うようにする*4等々、様々な手段が過去も現在も講じられている。



翻って、狼たちの争いはどうか。
いまわたしが挙げた例はそのすべてが『観客視点』での要求だ。狼たちの戦いに観客などいない*5。ならば勝負を『おもしろくするための工夫』などは不要だと言える。なぜなら、彼らのそれは競技ではないから。ケンカであり、戦争であり、もっと根源的に言えば生存競争の縮図であるからだ。
強い者が常に勝ち続けるだけの世界。そこにはドラマなど不要だ。ずるいも卑怯も敗者の戯言。口を動かすより腕力をふるってみよ!


……いや、ちがうな。それは、ちがう。
スーパーに集う狼たちは、やはりどこまでいっても人間なのだ。人間が人間らしく生きるためにはドラマが欠かせないのだ。一人だけ*6が常に勝つ。何度立ち向かっても勝つことが出来ない。これではやる気など出るはずも無い。


なら、そうだ。




あんたらが大将だよ。
好きに弁当を獲っていけよ。あんたらオルトロスの食い残しを俺たちはいただくからさ。






これこそが棍棒の一撃
<ヘラクレスの棍棒>とは、心を砕く重い槌。身体を殴られるよりもずっと痛い最悪の一撃。


もうお前らと遊ばないよば〜か!


平たく言ってしまえば、オルトロスは、集団から仲間はずれを喰らったにすぎない。
それだけかよ! そう思えるのならば、あなたは幸せだ。



しかし。




ここでまたわたしはひっくり返す。
強い者にしっぽを振り、彼らの残飯をあさる。
それは……人間じゃない、獣のルールだ。そこに正しさもなにもない。強い者に従うのは獣の生き方だ。


人間だからこそ。
そう、狼と呼ばれる人間だからこそできることは、相手がどれだけ強かろうと屈しないことでは無いのか!!


おまえらそれでもか?


スーパーに集う狼とは、人の言葉を話し狼のキバを持つ誇り高い存在ではなかったのか!?


これも、ちがうか。

一度は力に屈し<ヘラクレスの棍棒>の計略に乗ってオルトロス姉妹を仲間はずれにしようとした彼らを突き動かしたのは、こんな空虚に響く言葉などではない


漂ってくるうなぎの香りに、激しく鳴り響く佐藤の腹の虫。
それは店内に反響し共鳴し、集った狼たちに次々と伝搬していく。
まるで、サイレンの音に反応して遠吠えする犬の声に次々と合せていく住宅地の飼い犬たちのように。


否。ここにいるのは誰にもへつらうことの無い狼なのだ。


かくして、狼たちは目を覚ました。
さあ、ここからは生きるための戦いだ。容赦しないぞ、オルトロス



半額弁当が欲しければ戦え!!





△▼△



長え。
おそらく7割方の人がここまで読む前にどっか行っちゃってる気がします。
いつもにもましてわけのわかんないこと言ってますけれど、最終回ですから大目に見てね


さてさて。どんだけ強いのかと思ったら、オルトロスにかかっては瞬殺でしたよヘラクレスの棍棒!
まあ、だからこそ頭脳戦で彼女たちをおいつめていじめ作戦で追い出したわけなんでしょうけどねぇ。腕力で勝てる相手ならそうしてるよね。



う〜〜ん。
長々と言ってたことを今度はぜんぶひっくり返しちゃうかもしれない。でも言う。
ヘラクレスの棍棒が言うことはよくわかるんです。草野球を楽しんでいるところにイチローが混ざってきて本気でプレイでもされたらそりゃしらけますよね。もう来ないでくれって思うよね。
野球のように技量ごとに戦うフィールドが別に用意されていればいいのにと思っても、弁当争奪戦でそこまで望むのは難しいもんね。要は子供の遊び場の取り合いだよね。オルトロスの二人が仲間はずれにされて追い出されたのはやむを得ないというか、当たり前なんだよねぇ……。


実に難しい、考えさせられる話でした*7




△▼△




優勢に見えたけど、負けたんだね、オルトロス
だけど、この負けは彼女たちが狼たちのフィールドで生きていく資格なんだと思うよ。
もう狼たちはオルトロスに戦わずして弁当を譲ったりすることはないだろう。
同じ狼なんだから。自分たちよりちょっと強いだけの狼なんだから。


白粉さんは今回もうざかわいかったです。大声で戦闘直前のシリアスシーンに自作小説の朗読を被せてくるところはホントにうざかったよね。佐藤がいたらいいなってスーパーにやってきてちゃっかりといつものように(おそらく)戦闘無しでお弁当を手に入れてしまう要領の良さはかわいかったよね!





あとは、そーね……最終回に氷結の魔女がフィールドに出ないのはちょっと意外だったな。
佐藤がスーパーから飛び出していったとき、きっと槍水を呼びに行ったのかな? なんてちょっとだけ思っちゃったりしましたよ。ま、無いですね。最終回の彼女は、ず〜〜っとお姫様してましたね!
佐藤の『思いやり』のおかげで自分から約束したはずの勝負を放り出しちゃう形になっちゃったけど、ぜんぜん怒らなかったもの。今日の槍水先輩は佐藤に思いっきり甘える資格のある女の子なんだものね。


むー、あやめちゃんもぐずぐずしてたら勝負が決してしまうぞ。がんばれ女の子たち!




スーパーに涙は似合わない。



スーパーには笑顔こそがよく似合う。



実にその通りです。
お買い得品にわくわくして、タイムセールにどきどきして、レジの行列にいらいらして。
スーパーってとっても楽しいお店ですよ。普段はコンビニばっかりとかもったいないよ。


さあ、そこのキミも、今夜から半額弁当争奪戦にチャレンジしよう!!


わたしは、お総菜の半額を狙いますから。うん。狼じゃないから、襲ってこないでね。


ん。そんなところかな。
スタッフの皆さんお疲れ様でした。最後まで息もつかせぬ熱い展開に、わたくし手に汗握りっぱなしでしたことよ。
今後もがんばってくださいませ。二期があるといいねえ。


では!

*1:アクティブサスペンション等

*2:クルマにウェイトを搭載する等

*3:テスト走行の制限等

*4:ワンメイク化

*5:メタ視点で語る場合を除く

*6:オルトロスは二人組ですが

*7:たぶんわたしの考えすぎ